振興会設立までの経緯と活動内容

取組の経緯

 豪雪地帯である櫛󠄁池地区は、全国の中山間地域と同様、高齢化・過疎化が進行しています。
 地区内には、単独で農業生産のみならず、居住し続けることも困難となるいわゆる「限界集落」が発生することも懸念されていました。
 このような中、地域においては、国土を守る公益的な機能の維持、特色ある農業の振興、就業の場の確保、定住条件の整備などの観点から、櫛󠄁池地区全体を守るためには、集落の範囲を越えた連携体制を構築し、全集落が一体となった活動が不可欠との認識が醸成され、以下のような広域的な組織づくりに取り組みました。

[1]「櫛󠄁池地区生産組織連絡協議会」の発足

 櫛󠄁池地区では、従来、集落を範囲とする7つの生産組織により農業機械の有効利用等が図られてきましたが、経営規模が小さいためコスト低減にも限界がありました。このため、平成16年11月に生産組織の代表が集まり、「櫛󠄁池地区生産組織連絡協議会」を設立し、農業機械のさらなる効率的利用や作業の協力体制の構築を目指しました。

[2]「清里区中山間地域等直接支払集落協定」の締結

 櫛󠄁池地区では、従来、地域住民自らが国や県の各種施策を積極的に活用していました。平成12年から開始された「中山間地域等直接支払制度」についても全ての集落(地区内11集落及び隣接する1集落)それぞれで実施していました。
 17年度からこの対策は「第2期対策」に移行することとなりましたが、制度の内容が、自律的・継続的な農業生産活動等の体制整備に向けた前向きな取組等を推進する仕組みに一部改正されました。これを受け従来の集落毎の取組内容のままでは、交付金が20%(地区全体で年間800万円、5年間で4,000万円)減額される恐れが強いことが分かってきました。
 このため、集落代表者は5年間の活動実績を踏まえ、第2期対策への移行に向けて意向調査を実施しました。その結果は以下のようなものでした。

中山間地域等直接支払交付金の配分方法(10a当たり)

結 果理 由
「現状のまま」       3集落・地元意識が薄れることにより協定への参加意識が
 薄まる
・国や県の状況がよく見えない 等
「複数集落単位」      3集落・用水や溜め池管理の関係でまずは隣接集落と併合
 (将来的には一本化)
・最初から一本化でまとまるか不安 等
「一本化」         5集落・個別集落毎だと会計など事務処理の負担が大きい
・集落毎の事務軽減のため専従職員が必要となれば
 雇用機会が生まれる
・多面的機能の維持までは一本化でないと困難 等
「2期対策に参加できない」 1集落・5年間の営農継続が困難な農家が多い

 この意向調査結果を踏まえてさらに集落代表者会議を開催し、議論の結果、集落協定を一本化することでまとまりました。
 この結果、平成17年7月には、12集落(地区に隣接する1集落を含む。)を範囲とする広域的な「清里区中山間地域等直接支払集落協定」を締結するとともに、その推進体制として、9月には「清里区中山間地域等直接支払集落協定協議会」を発足させました。
  単独では営農継続が困難となっていた集落も広域協定が締結されたことにより、営農継続への不安が解消され、地区全体で農地を守っていくという意識が強くなりました。

[3]「櫛󠄁池地区農業振興会」の設立

 これら取組により、櫛󠄁池地区における農業振興関係の組織は「櫛󠄁池地区生産組織連絡協議会」、「清里区中山間地域等直接支払集落協定協議会」及び櫛󠄁池地区の認定農業者を構成員とする「清里区認定農業者連絡協議会」の3組織が併存することとなりました。
  しかしながら、高齢化や後継者不足による集落機能の低下が否めない現実がある中で、これら広域組織の運営のために地域の負担が増加することは意図するところではありませんでした。そこで、3組織の目的や事業を代行する機関を改めて設置することを検討した結果、平成18年9月、町内会長、農家組合長、直接支払支部代表、生産組織代表、認定農業者で構成する「櫛󠄁池地区農業振興会」(以下「振興会」といいます。)を発足させました。
  振興会設立に伴い、「櫛󠄁池地区生産組織連絡協議会」は所期の目的を達成したため平成19年4月に解散しました。また、「清里区中山間地域等直接支払集落協定協議会」は、第2期対策期間まで存続させ、第3期対策から協定の名称を「櫛󠄁池農業振興会集落協定」へ変更。それに伴い、平成23年4月、会の名称を「櫛󠄁池農業振興会」に変更しました。

活動内容等

 従来、むらづくり活動は集落単位で行われてきましたが、平成18年の振興会発足後は、広域的な取組は振興会が中心となって行っています。集落単位でのむらづくり活動に関しては、振興会は地区全体の広域的なコーディネーター的役割を果たし、各集落は振興会の支部と位置づけています。具体的な伝統芸能や祭り等の活動はこの支部(集落)単位の自主的な活動が基本となっています。

[1]「櫛󠄁池農業振興会」の運営経費

 振興会が行う広域的な活動経費には、「中山間地域等直接支払制度」等により交付される交付金の一部を充てています。
中山間地域等直接支払制度が第2期対策に移行する際、従来は集落を単位としていた12の協定を一本化しましたが、この時に、交付金の配分を下表のように改めました。

1期対策2期対策  増 減
個  人 配  分11,000 円10,500 円▲   500 円
集団共同取組活動10,000 円8,500 円▲ 1,500 円
広域共同取組活動 2,000 円 2,000 円
合    計21,000 円21,000 円  0 円

 配分の見直しにより、個人配分と集落(支部)への配分をそれぞれ減額し、交付金の内10a当たり2,000円を、担い手の確保・育成、広域対応機械整備、交流活動といった広域活動に充てることにしました。
 また、「多面的機能支払交付金」については、当初「農地・水・環境保全向上対策」時は10a当たり600円を広域活動費に充てていました。平成26年から交付金額の変更により、交付金の11%を広域活動費に充てることとし、農地維持支払は10a当たり330円、資源向上支払(共同)は10a当たり200円、資源向上支払(施設の長寿命化)は10a当たり440円をそれぞれ広域事務費として充てています。

[2]櫛󠄁池農業振興会の機能強化

 従来、役員会や学習会は地区内の集会所等を借用して実施していましたが、事務量が増えてきたこともあり、拠点となる事務所の確保が必要となってきました。
 このため、平成19年7月に閉鎖された旧JAの支店をお借りして、振興会の事務所「櫛󠄁池会館」を開設しました。現在、櫛󠄁池会館には、事務局長以下3名の職員が事務処理に当たるとともに、地域の皆さんの憩いの場、お茶のみ場として活用してもらえるようにしています。
 さらに、平成20年度総会において集落(各町内会)から推薦を受けた者を役員とすることを決定したことで、各集落の意見集約が容易とするため、集落に対しては情報の周知を図るための体制を作りました。
 振興会の役員会には上越市、JA、上越農業普及指導センターから担当者が出席していただき、情報提供、活動における助言等をいただきながら事業運営の支援を受けています。

[3]「多面的機能支払交付金」の活用

 平成19年度から「農地・水・環境保全向上対策」が実施されることが明らかとなった際、振興会は、厳しい条件下の中山間地域における農業の維持のためには本対策を実施することが必要であると考えました。それは、交付金を試算すると5年間にわたり毎年900万円を超える額が交付されることに加え、以下をメリットと考えたためです。

 ア 支出の工夫により集落維持費が縮小され農家負担が軽減されること、
 イ 中山間地域等直接支払の活動費から本対策の対象となる事業が除かれること、
 ウ 農道水路の維持管理面で、比較的規模の大きい修繕も可能になり得ること

 しかしながら地域の中では、本対策の実施には活動計画の作成や実際の共同活動の面で人的負担が大きいこと、役員の選任の面や小規模であるため不安があるといった声も上がってきました。
 そこで振興会は、すべての支部が事業対象となるよう取り組むこととし、活動は支部(集落毎)の取組を基本としつつ、単独では事業実施できない支部については広域の活動組織として取り組むこととしました。この結果、地区の全集落を対象とする4活動組織(広域1:8集落、単一集落3)で取り組むことになりました。平成23年度より始まった「農地・水保全管理支払交付金・向上活動支援」は採択条件により広域で取り組んできた5集落及び新たに菅原地区の1集落を加えた6集落で広域活動組織として取組むこととしました。平成26年度より「多面的機能支払交付金」に名称変更。農地維持支払、資源向上支払(共同活動・施設の長寿命化)ともに、1集落が広域に加わり10集落が広域活動組織として取り組み、さらに平成28年に1集落が加入したことにより面積227haとなり広域協定を締結し、組織名は櫛池農業振興会広域協定となりました。(単一集落1)

[4]「過疎化集落自立再生緊急対策事業」

 平成25年度総務省の補助事業として地域の過疎・高齢化の現状を打開し、地域資源を活用した地域再生モデル事業に取り組みました。バックホウを購入し高齢者の生活支援として冬期間の除雪支援、棚田の農地保全活動、休耕地等を再生し、地域の特産品(大豆、アスパラ、山菜類)の生産拡大により農業所得の向上と活性化を図ります。

[5]「農産物等庭先集荷サービス事業」

 平成24年より市の補助事業として始まった本事業は、地区内の高齢農業者や女性農業者等から集めた農産物等を販売所に運搬する取り組みで、農産物の生産拡大と農業者の生きがいづくりにつながっています。

[6]「多様な主体との連携支援事業」

 高齢化と担い手不足により、集落内の農道、ため池、水路など共同作業による維持管理が困難になって来ています。本事業の取組みにより、集落出身者や知人等の協力を求め、作業の負担軽減と地区の持続的発展を図ります。

[7]「農村集落活性化支援事業」(平成27~31年度)

 人口減少社会を踏まえ、地域住民が主体となった「櫛池地区将来ビジョン」づくりや集落営農組織等を活用した集落間のネットワーク化により、地域の維持・活性化を図ります。主な取組として組織の強化、担い手の育成、農産物等庭先集荷サービス、米等の農産物の宅配販売、多様な主体との連携活動、都市交流事業、体験交流ツアー等を実施します。